2019年2月10日 巻頭言

イエスはその場所に来ると、上を見上げて彼に言われた。「ザアカイ、急いで降りて来なさい。」

ルカの福音書 19章5節

 

ザアカイはエリコに住む「取税人のかしらで、金持ちであった」と紹介されています。当時のユダヤ人社会で、取税人はユダヤ人からは律法に背く「罪人」として見下され、私腹を肥やす者として憎まれていました。彼らはユダヤ人でありながら、ローマの手先となり税金の取り立てを請け負っていたからです。ですからザーカイに向けられた民衆の憎しみも尋常のものではなく、人々の敵意に囲まれて、孤独な人生でした。そのためエリコに来られたイエスを一目見ようとしても、人垣に阻まれて見ることができなかったのです。それでもイエスを見たい一心から前方に走り出て、いちじく桑の木に登ったのです。

いちじく桑に近づいたイエスは、木に登った人物を見上げ、「ザアカイ、急いで降りてきなさい。わたしは今日、あなたの家に泊まることにしているから。」と言われたのです。彼は、急いで降りて来て、喜んでイエスを迎えたのです。ザアカイにとっては、自分の存在が認められ、人から愛される初めての体験だったのでしょう。イエスがザアカイに注がれた愛は、私たち。一入一人にも注がれています。しかし、イエスの愛を受けるどころか、イエスの行動を非難する人々が大勢いたのです。

バブル全盛期に、「お金があれば何でもできる」と言った人がいました。しかし、お金は泡のように当てにならないものでした。いつまでも存続して変わらないのは、キリストの愛です。この愛がザアカイを激変させたのです。ザアカイは、自発的に、財産を貧しい人たちに施し、不正な取り立てを四倍にして返すと申し出ました。「失われた者を捜して救うために来た」イエスに見いだされ、ザアカイのように愛の人に変えられるために、自分が「失われた人」であることを知る者は幸いです。