2019年11月24日 巻頭言

「あなたがたは、今日、私がナオミの手から、エリメレクのものすべて、キルヨンとマフロンのものすべてを買い取ったことの証人です。」

ルツ記 4章9節

 夫を失い、二人の息子を失い、失意のどん底でベツレヘムに帰ってきたナオミ。しかし、彼女の嘆きを喜びと希望に変える時がきました。それをもたらしたのは、ナオミについてきた亡き息子マフロンの嫁ルツです。彼女がボアズの畑で落穂を拾ったことから、ナオミとルツの歩みは急展開することになります。
ボアズはナオミの近親者で、夫エリメレクの残した土地を受け継ぐ買い戻しの権利と義務を負う者でした。
ボアズは自分よりも買戻しの義務を負う近親の者にその責任を果たさせようと、証人となる長老たちの前ではっきりさせようとします。近親の者は「私には、その土地を自分のために買い戻すことはできません。」と言って、その意思のないことを表明しました。
ボアズは長老たちと共にその権利が自分に与えられたことを確認して、義務を果たすことを証人たちの前で宣言します。
 ボアズとルツの結婚は、当人たちの想像もできない形で救いの歴史にその名を刻むことになります。
 ルツ記の巻末に記されている系図は、神の不変の約束を信じるイスラエルの信仰の系図を示すものです。神の救いは、イスラエルという民族に約束されていたとしても、その救いを約束するダビデの家系には、異邦人も入っています。男中心の社会にあってルツの信仰を神は顧み、この信仰から救い主の歴史を導かれるのです。神の約束の救いの導きの中で、人間の悲しみや苦しみ、無力が、神の恵みの力によって乗り越えられ、希望と喜びへと変えられていく現実を見る時、その恵みが今、私たちにも変わりなく現されていることを覚えさせられます。

主任牧師  石田敏則