2020年1月26日 巻頭言

そこで婦人よ、今あなたにお願いします。それは、新しい命令としてあなたに書くのではなく、私たちが初めから持っていた命令です。私たちは互いに愛し合いましょう。

ヨハネの手紙第二 5節

 ヨハネの手紙第二の執筆者は、イエス様の十二弟子のひとりでヨハネの福音書を書いたヨハネです。第二の手紙はヨハネが晩年に書いたと言われます。その頃、教会は異端に悩まされていました。偽教師が教会に入り込み、キリスト者を惑わして教会がキリストの道から逸脱するように仕向けていました。ヨハネはそのような状況を憂いてこの手紙を書き、教会が教会であるために必要なことはなにかを示したのです。
 「選ばれた婦人とその子どもたちへ」(1)と書き出されています。当時、国や町を女性形で表現することがあり、同様に「教会」を女性として表現することもありました。ですから婦人とは教会、子どもたちとは教会員と取ることができます。
 ヨハネは教会が異なる教えに流されないために、互いに愛し合うようにと説いています。これは新しい命令ではないとヨハネが言うのは、これを最初に示したのはイエス様だからです(ヨハネの福音書13章34節)。ですからキリスト者が愛を考える時には、イエス様が示された愛から逸れてはなりません。
 愛、とはとても耳障りの良い言葉です。この世には様々な形の愛があります。博愛、兄弟愛、親愛、情愛、恋愛などなど。そのなかで教会が忘れてはならない愛は、キリストから発し、キリストの十字架に示された愛です。それは仕える愛であり、他者を支える愛です。イエス様が弟子たちに「互いに愛し合いなさい」と仰ったのは、キリストの愛を受けた者は、互いに愛し合う関係に導き入れられているということです。私たちは時に、イエス様のように人を愛することの難しさを感じます。しかしそれは主が聖霊によって力を与えて、そのようにさせてくださるものです。人間の力によるのではありません。主の助けを仰ぎながら主の道に進ませていただきましょう。

担任牧師  荻野泰弘